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HSPの限界サイン|それってHSPだけ?ちょっと待って!

インターネットで「HSP」と検索すると、たくさんの情報が出てきます。「限界サイン」もそのひとつです。

「HSP診断テスト」を受けてHSPに当てはまった方、もしくはHSPを自認する方であれば、一度は目にしたことがあると思います。

この記事では、私が書籍やネット上で目にした「限界サイン」について、メンタルヘルスの観点からの考察と注意点をお伝えしようと思います。

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メディアで紹介される「限界サイン」と精神疾患

HSP関連書籍やネット記事を読むと、「限界サイン」として共通して注意喚起されているものは概ね以下のものです。

・睡眠障害(不眠または過眠)
・食欲の低下または亢進
・喉の異物感(物が詰まった感じ)
・憂鬱(気分の落ち込み)
・不安(未来のネガティブな予測の反芻)
・反省(過去のネガティブな出来事の反芻)
・理由もなく涙が流れる
・意欲減退(好きだったことが楽しめない)
・倦怠感(体が鉛のように重い)
・怒りやイライラを感じやすい
・いつもより神経が過敏になる
・動悸(ドキドキして落ち着かない) etc.


これらは、精神疾患の症状といわれるものを網羅的に取り上げて、「これがHSPの限界サインです」と表現しているもののように私には見えます。

これらのサインが出始めていたら、多くの人が既に思考自体が不合理に変化している可能性があり、冷静に自力でストレス対処を行うのは困難だと思います。

「限界サイン」が出ているとすら認識できないかもしれません。

HSPに特有のサインなの?

対処法としてよく目にする、「お風呂にゆっくり入る」、「気持ちを紙に書き出す」、「素直な気持ちを表現する」程度の対処では回復は難しいでしょう。

そもそも対処しようとすら思えないかもしれません(必要性に気づけない)。

これらのサインが単独ではなく複数同時に起こっているとしたら、それはもはや「HSPの限界サイン」などではなく、「抑うつ状態」、場合によっては「精神疾患」と呼ばれるものです。

例えば、
①眠れない
②気分が落ち込む
③好きだったことが楽しめない

これら3つが揃って数週間続けば、うつ病の診断がついてもおかしくありません。

現時点では、「HSP(人類の約20%)だけに生じる特有の限界サイン」というものは無いと思っておいてよいでしょう。

ちなみに、
「健康状態が悪い」
「お腹の調子が悪い」

という限界サインもありました。

これらがどうして「HSPの限界サイン」なのでしょうか。HSPに限ったことではなく、誰に対しても「早くお医者さんに診てもらってください」としか言えないものです。

「HSPの限界サイン」は誰にでも当てはまる

先に挙げた「限界サイン」は、HSPに特徴的なものというわけではありません。

軽度であれば精神疾患の前駆症状、重度であれば精神疾患の症状そのものといえるものです

HSPとは本来、「精神疾患予備軍」という概念ではないはずです。

ということは、HSPの「限界」サインということは、全ての人にとっての「限界」サインともいえるでしょう。

優しい人も、怒りっぽい人も、共感性のない人も、深く考えないちゃらんぽらんな人も、先ほど挙げた「HSPの限界サイン」が出ていれば、どんな人も危険な状態といえるのです。

従来からある「精神症状」に過ぎません!

HSPだけに特有の「限界サイン」を語るのであれば、科学的にHSPを定義して、正しく「診断」する必要があります。

そして、「(人の特性は正規分布するはずなので、HSPも正規分布していると思いますから)統計的にHSP度がとても高い上位○%の人にだけ現れるサイン」というものが見出されなければなりません。

このような信頼できるサインが認知されるまでは(されないかもしれませんが)、巷にあふれる「限界サイン」というのは、単なる精神疾患の前駆症状、もしくは精神疾患の症状そのものであると考えておいてください。

なぜこんなにもHSPは精神疾患と親和性のあるものにカテゴライズされているのでしょうか。

その原因は、手軽に受けることができる「診断テスト」にあるのかもしれません。

「診断テスト」なるものは、もともと精神疾患と親和性の高い、強い不安傾向、抑うつ傾向、発達障害傾向を持つ人たちを、広くすくい上げているのかもしれません。


※HSPの診断テストについては、「こちら」も併せてご覧ください。

「限界サイン」ではなく「限界ライン」が重要です

日頃から、「私はストレスに弱いなあ(環境からの刺激に敏感に反応するなあ)」と感じている方(HSPに限りません)が注意すべきは、「限界サイン」ではなく「限界ライン」です。

先に挙げた「限界サイン」が現れるまでのストレス耐性のレベルにこそ注目すべきです。どれくらいのストレスを受けるとストレス反応が現れるのかという目安を知ることです。

そのストレスレベルを超えないように行動をコントロールすることが重要です。これがセルフケアですね。


※セルフケアの詳細については「メンタルヘルスとセルフケア|心の健康を向上させる方法と改善効果」をご覧ください。

込み入った「HSP現象」をすっきり整理しよう

もし、ストレス反応が現れないストレスレベルを維持した場合に、登校や出勤など最低限必要な社会活動にすら支障が出てしまうのであれば、「限界ライン」を上げる工夫や訓練(心理療法)が必要となるでしょう。

すなわち、

「ネット上で気軽に受けることができるHSPの診断テストに当てはまるのかどうか」
という<娯楽>と、

「生物学的に敏感な神経を持つこと」
という<特性>と、

「どのくらいのストレスでストレス反応が現れるのか」
という<耐性>は、

きっちりと分けて考える必要があると思います。


※ストレス反応の詳細については「ストレスの原因と症状|効果的にストレスを発散・解消する方法について」をご覧ください。

HSPの「限界サイン」とは何か?

精神疾患につながるようなストレス反応を、どうしてことさらに「HSPの限界サイン」として扱わなくてはならないのでしょうか。私にはその理由が分かりません。

先ほど挙げた「限界サイン」は精神疾患の前駆症状、あるいは精神疾患の症状そのものです。全ての人に当てはまるものです。

「HSPの方に注意喚起している」というのであれば、(敢えて言いますが)<娯楽>としての「HSP診断テスト」に当てはまる人とは、精神疾患予備軍ということなのでしょうか。

そんなことはないと思います。私はどうしてもここにビジネスのにおいを感じてしまいます。

「HSPは精神疾患になりやすいぞ」とSNSなどで盛り上がるのは個人の自由ですが、実害が出ないように気をつけてほしいと思います。

実害とは、
①社会的タスクからの離脱
②経済的損失

この2つです。


▶HSPの関連記事はこちらにもあります。ぜひご覧ください。

まとめ

世の中に「HSPの限界サイン」として紹介されているものは、HSPだけに特有のサインではなく、誰にでも起こる「限界サイン」です

したがって、HSPを自認する方が注意すべきは「限界サイン」ではなくて、ストレス耐性としての「限界ライン」です。

これは確保すべき睡眠時間かもしれないし、累積の残業時間管理かもしれません(個人によってさまざまでしょう)。

「限界サイン」を迎えないように、「限界ライン」を知りセルフケアを行い、ストレス反応を予防していきましょう。

実はこれだってHSPに限ったことではありません。全ての人に共通する、健やかな日々の過ごし方ですね。


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松村メンタルサポート事務所

代表:松村 英哉(まつむら えいや)

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 精神保健福祉士(登録証番号:第20949号)
 産業カウンセラー(合格証番号:S0605857)
 ストレスチェック実施者資格(受講番号:SCKOTO15111012号)
 社会福祉施設・施設長資格(修了番号:14A2-0486)
 中学校教諭1種免許状・社会(免許状番号:平13中1第20105号)
 高等学校教諭1種免許状・公民(免許状番号:平13高1第21175号)
 高等学校教諭1種免許状・地理歴史(免許状番号:平14高1第22856号)