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HSPの診断テスト|正確な方法?HSPの基準より大切なこと

(※2023年9月26日:追記更新)

HSP(Highly Sensitive Person)とは、物理的、化学的、心理的な刺激に対して敏感に反応する神経を持つ人のことです。

HSPは病気ではなく生まれつきの特性です。しかし、HSPの人は自分の敏感さに悩んだり、環境に馴染めなかったりすることが多いようです。

自分はHSPかもしれないと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、HSPの提唱者である米国の心理学者、エレイン・N・アーロン博士によるHSPの「診断」方法をご紹介します。

また、安易な「診断」による問題点と、HSPの「診断書」についても併せてお伝えします。

前提条件

この記事で「診断」として表現する言葉は、あくまでも、HSP提唱者である、エレイン・N・アーロン博士が定める概念に当てはまるという意味であって、治療が必要な状態にあるという意味ではありません

病気の診断と区別するために、カッコつきの「診断」で表しています。病気の診断ではなく、「特性の診断」、「性格診断」であることをご理解ください。

HSP「診断」に必要不可欠な4つの要素:「DOES」

HSPと判定するために必要不可欠な条件は下記の4点です(DOES)。

アーロン博士は、これら4項目のうち、1つでも当てはまらない項目があれば、「おそらくHSPではない」と述べています。

あなたは全てに当てはまりますか?

D:深く処理する(Depth of processing)

物事の表面でなく複雑なことや細かいことを認識する時に使う脳が活発に働くため、物事を徹底的に処理したり、深く考えたりする。

あれこれ可能性を考えてなかなか決断できなかったり、行動を起こすのに時間が掛かったりする。

O:過剰に刺激を受けやすい(being easily Overstimulation)

自分の内外で起こっている全てにひといちばい気がつき、処理するので、精神的にかなりの負荷がかかり、それゆえに体も人より早く疲労を感じる。

E:全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い(being both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular)

物事の1つひとつを深く感じ取り、涙もろく、人の心を読むことに長けている。初めてあった人や動物にも共感することができる。

S:ささいな刺激を察知する(being aware of Subtle Stimuli)

思考や感情のレベルが高いため、小さな音、かすかな臭い、細かいことに気づくことができる。声のトーン、視線、あざ笑い、ちょっとした励ましにも気づく。

しかしプレッシャーや過剰な刺激で疲労するなど、興奮しすぎた状態では、この鋭い察知力は消えてしまう。

◇◇◇◇◇

以上です。

いかがでしたか? 全て当てはまりましたか?

1つでも当てはまらない項目があれば、あなたはHSPではないことになります。


※出典:『ひといちばい敏感な子』エレイン・N・アーロン著 青春出版社


DOESに当てはまる人の自己テスト

上記の「DOES」に全て当てはまった方は、ようやくHSPの自己テストに進むことができます。

「診断」基準は、23問中「はい」が12問以上あったら、或いは1つでもとても強く当てはまれば、あなたはHSPです

以下の設問の「はい」の数をチェックしてみましょう。

HSP自己テスト(23問)

1. 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ

2. 他人の気分に左右される

3. 痛みにとても敏感である

4. 忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる

5. カフェインに敏感に反応する

6. 明るい光や強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などに圧倒されやすい

7. 豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい

8. 騒音に悩まされやすい

9. 美術や音楽に深く心動かされる

10. とても良心的である

11. すぐにびっくりする(仰天する)

12. 短期間にたくさんのことをしなければならない時、混乱してしまう

13. 人が何かで不快な思いをしている時、どうすれば快適になるかすぐに気づく(例えば電灯の明るさを調節したり、席を替えるなど)

14. 一度にたくさんのことを頼まれるのがイヤだ

15. ミスをしたり、物を忘れたりしないようにいつも気をつける

16. 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている

17. あまりにもたくさんのことが自分のまわりで起こっていると、不快になり神経が高ぶる

18. 空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる

19. 生活に変化があると混乱する

20. デリケートな香りや味、音、音楽などを好む

21. 動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している

22. 仕事をする時、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる

23. 子供のころ、親や教師は自分のことを「敏感だ」とか「内気だ」と思っていた

◇◇◇◇◇

12問以上に「はい」、或いは1つでもとても強く当てはまれば、あなたはアーロン博士の定義するHSPということになります

※あくまでも「特性診断」ですので、血液型占いや星座占いと同じように、楽しみながらご利用ください。


※出典:『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ』エレイン・N・アーロン著 講談社


HSPカテゴリーに留まるべきではない特性

下記にご紹介する特性は、HSPとは無関係に生じる精神疾患および精神障害の概要です。

様々な刺激に敏感に反応したり、環境に馴染めなくなったりするところがHSPにとても似ています

下記の特性に該当する方は、HSP「診断」の有無にかかわらず、その疾患専門の治療が必要になる可能性があります。

1つでも当てはまる方は、HSPの「診断」カテゴリーに留まるべきではありません

HSPをいったん忘れて、医療機関を受診するか、精神疾患にも精通したカウンセラーに相談することをお勧めします。

発達障害(ASD、ADHD)

◆場の空気が読めず、コミュニケーションに困難があり、社会生活に著しい困難を抱えている

◆深刻なミスをしたり、重要なことを忘れてしまうことがとても多く、周りから「どうして?!」と驚かれている


※大人の発達障害について詳しく知りたい方は、スタッフブログ「大人の発達障害の特徴|症状・問題行動・空間認知・時間感覚から理解する」をご覧ください。

気分障害(うつ病、躁うつ病)

◆気分が強く落ち込み、寝付いても直ぐに目が覚め、全ての楽しみが消失している

◆「とても元気な時期」と「うつ状態の時期」を数週間から数か月単位で繰り返している

不安障害(強迫性障害、全般性不安障害、社交不安障害)

◆どうでもいいことなのにやめられないことがあり、社会生活に支障が出ている

◆どうでもいいことが不安でたまらなくなり、行動が制御できない

◆人前で恥をかくのを極端に恐れていて、人前に出ることや会合などを避けることで、生活に支障が出ている

ストレス関連疾患(適応障害、PTSD)

◆明確なストレスが原因で社会的な活動が周りの人よりも過剰に制限されていて、原因ストレスから離れると日常生活が普通に送れるようになる

◆恐怖記憶が頭に鮮明に蘇り、自己評価が著しく低下し、恐怖に関連した物事を避けることで社会生活に支障が出ている


<関連情報>
HSPの限界サイン|それってHSPだけ?ちょっと待って!

HSPと適応障害について

適応障害は、HSP特性を持つ人がメンタル不調に陥った時に最も診断されやすい精神疾患のひとつといえるでしょう。

適応障害ということは、既に学業や仕事を継続できない状態が発生していますので、心理療法によるストレス対処(行動の変容)が必要になります。

しかし病前の特性がHSPであっても、HSP専門の治療は行われません。あくまでも適応障害の治療の中で、必要があればHSPの特性を対象にしていくというふうに理解してください。

HSP専門の治療は存在しない

HSPカテゴリーに留まるべきではない特性(精神疾患)について見てきましたが、これらの精神疾患に当てはまる場合は、精神科の医療機関を受診する必要があります。

しかし、そうだからといって、あなたがHSPでなくなるということではありません

たまたまHSPの特性を持つ人が精神疾患になってしまっただけであり、HSPの特性は持ったままです。

ただ、精神疾患になってしまったのであれば、HSPはいったん忘れて、先ずは病気の治療に専念すべきです。

症状が落ち着いて再発予防策を考える段階になってから、必要に応じてHSPの個別の特性に対して心理療法を行っていくことになります。

HSPの診断書は発行できるの?

診断書とは、その人が今かかっている病気を証明する、医師のみが発行できる書類のことです。

HSPは病気ではありませんので診断書が発行されることはありません

HSPの特性を持つ人が、うつ病や適応障害、不安障害などの病気になっている場合には、その病名が明記された診断書が発行されます。

従って、診断名の欄に「HSP:Highly Sensitive Person」と記載されることはありません。

もしHSPの診断書を発行してくれる医師がいたら、それは金儲けかモグリなので信用してはいけません。

HSP診断よりも大切なこと

自分がHSPかどうかより、どのような特性が今の「生きにくさ」や「生活上の苦しみ」につながっているのかを見極めることのほうが重要です。

1996年に米国の心理学者が提唱したHSPというカテゴリーに、自分が当てはまるかどうかが重要なのではありません。

私がHSP特性を持つ方のカウンセリングを行う際には、「HSP」を主語にして語ることはありません。

「HSPの治療は~」、「HSPの症状は~」、「HSPを克服するためには~」という捉え方はせずに、「あなたの○○の特性は~」、「あなたのこの部分の神経の過敏さは~」、「あなたのここの繊細さを克服するには~」というふうに、個別のターゲットとなる“症状”を主語にして語っていきます。

なぜなら、人類の約20%が該当するといわれるHSPを、ひとまとめにして治療の対象にすることなど不可能だからです。


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まとめ

ここまでお読みいただけたら、「HSPを診断する」ということが、実はそれほど重要ではないことがお分かりいただけたと思います。

私は精神科医療およびメンタルヘルスの専門家として、ある事態をとても危惧しています。

その事態とは、HSPという言葉が独り歩きをして、「わたしはHSPだから…」と、社会や人間関係のタスクから逃げるための言い訳に使われてしまうことです。

この事態を防ぐためには、HSP、メンタルヘルス不調、精神疾患の違いについてしっかり理解していただくことがとても重要だと考えています。

こうしたことが社会に浸透することで、本当にその人のためになる治療や支援が提供されると考えています。

※HSPについてさらに詳しく知りたい方は、こちらのスタッフブログもご覧ください

投稿者プロフィール

松村 英哉
松村 英哉精神保健福祉士/産業カウンセラー/ストレスチェック実施者資格/社会福祉施設施設長資格/教育職員免許
個人のお客様には、認知行動療法に基づくカウンセリングを対面およびオンラインで提供しています。全国からご利用可能です。

法人向けには、メンタルヘルス研修やストレスチェック、相談窓口の運営を含む包括的なサポートを行い、オンライン研修も対応。アンガーマネジメントやハラスメント研修も実施し、企業の健康的な職場環境づくりを支援します。