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不安のメカニズムと対処法|仕事の不安を解消してストレスを減らそう

この記事では、「職場における不安」についてお伝えします。

ここでは精神疾患である不安障害には踏み込まず、日常的に職場で感じる不安のメカニズムと対処法についてご紹介します。

不安はとても身近な感情です。しかし様々なメンタルヘルス不調の要因にもなっています。

現代社会において不安とは、実はとてもやっかいな感情になってしまいました。その理由と併せて、不安を小さくする方法について解説していきます。

不安とは(恐怖との違いについて)

不安とはいったい何でしょうか。不安についてどんなイメージをお持ちですか。

ここでは「恐怖」との違いを明らかにすることで、不安についての理解を深めてみたいと思います。

恐怖について(現実の脅威)

不安に似た言葉に「恐怖」がありますね。恐怖はどの様な時に感じますか。

例えば、山で野生のクマに出会ったとき、大きな地震が起きたとき、泥棒と鉢合わせになったとき、などですね。

恐怖は実際に身の危険を感じているときや、命を脅かされている最中に生じる感情、すなわち、現実に目の前に存在する怖さのことです。

そして、クマや泥棒が去っていき、大きな揺れが収まると、恐怖も自然と消えていきます。恐怖の対象とは現実のクマであり揺れであり泥棒です。

ちなみに、恐怖の対処法は「逃げる」か「戦う」かしかありません。二者択一です。

※恐怖についてさらに知りたい方は、スタッフブログ「PTSDの症状と治療|トラウマを除去して消す方法は存在するのか?」も併せてご覧ください。

不安について(バーチャルな脅威)

それに対して不安は、「実体のない恐怖」と言うことができます。すなわち仮想現実、バーチャルな怖さです。

例えば、「もし今ここにクマが出てきたらどうしよう」、「大地震が起きたらどうしよう」、「泥棒に入られたらどうしよう」などと怖がることが不安です。

すなわち、「実体のない、まだ起きていない、未来に対するネガティブな予測」が不安です。

実体のないものが怖いということは、不安の対象はどこにあるのでしょうか。それは「自分の頭の中」ということになります

不安のメカニズム

私たちは、ある出来事を経験すると脳のニューロンネットワークによって情報処理が行われ(この情報処理過程は全く意識されません)、その出来事の意味や解釈が意識に現れます。

ある出来事の解釈が、「確認しないと悪いことが起こる」とか、「質問したらバカだと思われる」などのネガティブなものであれば、それが不安になります。

ちなみに、どの様な解釈が意識に現れるかは、遺伝的な要因が大きいとされています。

したがって、不安が強い人というのは、生まれつき「不安になりやすい脳」を持っているといえるでしょう。

そして不安が長く続くと、生体のストレスシステムによって、様々なストレス反応(体調不良)が引き起こされます。

※ストレスについて詳しく知りたい方は、スタッフブログ「ストレスの原因と症状|効果的にストレスを発散・解消する方法について」をご覧ください。

どうして不安になるの?

ではどうして人間には不安というシステムが備わっているのでしょうか。

それは「危険を事前に回避するため」です。生き残るために遺伝子に組み込まれた自己防衛本能です。

「鈴をつけて山に入る」、「家具を固定する」、「ドアに鍵を掛ける」など、危険を事前に回避するための警報システムなのです。

もし人間に不安というシステムが備わっていなかったら、様々な危険を回避することができず、今日のような繁栄はなかったかもしれません。

したがって適度な不安は私たちにとってなくてはならない、とても大切な感情なのです。

過剰な感情になってしまった不安

不安とは進化の過程で旧石器時代には形づくられ、現代を生きる私たちも、旧石器時代の人類と同じ不安を持っています

もともと不安は、「肉食獣に襲われないだろうか」、「隣の部族に殺されないだろうか」、「この先に崖があり転落しないだろうか」といった、命に直結した脅威を予測するものでした。

旧石器時代においては、不安が強い人ほど死ぬ確率が低く、生存に有利だったと考えられます。

そして21世紀の現代では、社会システムが高度化し、死に直結する脅威はほとんどなくなってしまいました。敏感に死を予測して対処する必要性が極めて小さくなったのです。

にもかかわらず、不安というメカニズムは旧石器時代から変わらずに、私たちの脳みそに残ったままです。

したがって、現代を生きる私たちにとって不安とは、「過剰な感情」になってしまいました

これは例えば、旧石器時代にはとても希少だった糖質が、現代では過剰となって糖尿病を引き起こしたのと同じように、もともと生存に必須だった不安が、現代では過剰となり、様々なメンタルヘルス不調を引き起こすようになったといえるのです。

不安の何が問題か

不安の感じ方にはもちろん個人差があります。旧石器時代には重宝されたような強い不安を持っている人は、様々な場面で困難を感じることになります。

不安が強い人が特に困難を感じるのは職場です

職場というのはストレスの元(ストレッサー)の宝庫です。短い納期、要求精度の高さ、顧客からのプレッシャー、上司からの評価、同僚の目などなど。

不安の強い人は職場のストレッサーによって、簡単に不安アラートのスイッチが入ってしまいます

不安による顕著なストレス反応は不眠(睡眠障害)です。布団に入っても仕事のことが頭から離れず、不安が頭の中をぐるぐると駆け巡ります。

職場で感じる強い不安は、メンタルヘルス不調の最大の原因といってよいでしょう。

不安の対処法

仕事を通して慢性的なストレス反応に苦しんでいる方は、不安を乗り越えるために下記の4点を実践してください。

①不安が強いことを自覚する

実際に起こっていることや、周りの人と比較して、自分の不安が過剰であると自覚できなければ、不安を乗り越えることは絶対にできません

ぐるぐる思考や不眠などのストレス反応に苦しんでいる方は、一度自分の不安の強さを検証してみてください。

不安が強いことは恥ずかしいことではありません。感情が正常に働いている証拠です。旧石器時代からの不安の強さを遺伝的に引き継いでいるだけの単なる特性です。

違う時代に生まれていたなら好ましい特性だったはずです。不安が強めの人にとっては、現代社会が安全すぎるだけなのです

②不安は仮想現実だと認める

職場で不安を感じたら、「これは脳が作り出している仮想現実だ」ということに気づき、そして認めることがとても大切です

不安はバーチャルですから感じるだけにとどめ、思考で検討せず、今やるべきことに集中することが重要です。

注)職場のハラスメントはバーチャルではなく現実(すなわち恐怖)ですから、「逃げる」か「戦う」かしかありません。先ずは上手に逃げるようにしてください。どう戦うかはじっくり作戦を練りましょう。

③回避行動をとらない(不安から逃げない)

1日は24時間しかありません。そのうちの7~8時間は睡眠に充てなければなりません。

しかしそれを無視した長時間労働、完璧主義、際限のない確認、仕事の抱え込みなどは、不安から逃げているだけかもしれません。

このような働き方は、不安を小さくするのではなく、逆に不安を強化してしまう「回避行動」の可能性があります。

恐怖からは逃げる必要がありますが、不安から逃げてはいけません

今の行動が、不安からの強い警告による回避行動だと気づいたら、その行動はストップする必要があります

④長期的なメリットのために行動する

回避行動をストップしたら、次に長期的にメリットとなる行動を起こします。

長期的なメリットとは、その行動を長く続けても自分にも組織にも悪いことが起こらない行動のことです。

不安から強力な警告が発せられていますので、不安に立ち向かう行動を実践するのはとても怖く感じるはずです。

しかし不安とはバーチャルですから、ほとんど的中しません。勇気を出して長期的にメリットとなる行動にチャレンジしてください。

チャレンジを何度も繰り返すことで、元々あった強い不安自体が小さくなっていきます。

すなわち、脳のニューロンネットワークによる解釈が、少しずつ安心の方向へ変化していくのです。

まとめ

少し立ち止まって考えてみて下さい。今までの忙しくてストレスフルな働き方は自己実現のためではなく、「不安から逃げるため」だった可能性はないでしょうか。

仕事がつらい、会社に行きたくない、誰にも相談できないと考えている方は、強い不安が原因かもしれません

このような状態から脱するためにも、ぜひ不安の強さを検証して回避行動をストップし、長期的にメリットとなる行動を、怖くても実践しましょう。

そして不安を小さくして、ぐるぐる思考や不眠などのストレス反応を減らし、充実した職業生活を手に入れていただきたいと願っています。


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松村メンタルサポート事務所

代表:松村 英哉(まつむら えいや)

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 精神保健福祉士(登録証番号:第20949号)
 産業カウンセラー(合格証番号:S0605857)
 ストレスチェック実施者資格(受講番号:SCKOTO15111012号)
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 中学校教諭1種免許状・社会(免許状番号:平13中1第20105号)
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