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ダイエットと摂食障害(拒食症)|リバウンドの原因と効果について

誰でも一度はチャレンジしたことがあるダイエット。

とっても身近なものですが、過度なダイエットは精神疾患に陥る可能性がある怖いものです。

この記事では過度なダイエットの危険性と摂食障害(拒食症)について解説します。

スリムなモデル体型が美しい?

今日、かつてないほど多くの人たちがダイエットに励んでいます。

最新ダイエットに関する本は瞬く間にベストセラーになりますし、ある食品にダイエット効果があるとテレビで紹介されると、その食品がスーパーの売り場から消えることも珍しくありません。

今やダイエット業界は何十億円も売り上げる、とても大きなビジネスになっています。

さらに、私たちが日々メディアで目にするタレントやモデルの体型が理想的であると、意識に刷り込まれてしまっています。

しかし、生まれながらにモデルのような身体を持っている人はわずかです。そのため、理想とは異なる体型で生きることに、引け目を感じるようになってしまいました。

ダイエットの落とし穴と留意点|過食とリバウンド

そもそもダイエットというものは、体重が減れば減るほど、もっと痩せたいという気持ちが強くなるものです。

痩せれば痩せるほど、考え方自体が自動的に不合理になっていきます。体型と食に関して頑固になり、偏食もひどくなっていきます。痩せることに執着するようになります。

しかし、体重がある限界を超えると、「食べたい!」という強い衝動が起こります。これは生存本能として当たり前ですね。

ある時点で我慢できなくなり、ドカ食い(過食)が始まります。ここでのドカ食いは正常な生理現象です

食欲にまかせて体重が増加すると、元々の体重を少し超えたあたりで、強い食欲は自然に治まります。これがいわゆるリバウンドです。

そして、体重が元に戻ると、体型や食に関する頑固さや、偏食も軽減してゆきます。リバウンドすることで、瘦せに対する不合理な考えも収束するのです。

しかし、体重が元に戻ることが受け入れられず、過食のあと、喉に指を入れて吐き出したりすると(これを自己誘発性嘔吐と言います)、過食嘔吐(食べ吐き)が習慣化する危険性があります。

このパターンに陥ったものが、神経性やせ症(いわゆる拒食症)という精神疾患です。

神経性やせ症の診断基準

神経性やせ症の診断基準は以下の通りです。(DSM-5)

A:有意に低い体重

必要量と比べてカロリー摂取を制限し、年齢、性別、成長曲線、身体的健康状態に対する有意に低い体重に至る。(BMI[体重kg÷身長m2]が17以下

B:体重が増えることへの恐怖

有意に低い体重であるにもかかわらず、体重増加または肥満になることに対する強い恐怖、または体重増加を妨げる持続した行動がある。

C:ボディイメージの歪み

自分の体重または体型の経験の仕方における障害、自己評価に対する体重や体型の不相応な影響、または現在の低体重の深刻さに対する認識の持続的欠如。

D:ふたつのタイプ(過食嘔吐の有無)

摂食制限型
過去3か月間、反復的な過食または排出行動(嘔吐または下剤の乱用など)がないこと。

摂食排出型
過去3か月間、反復的な過食または排出行動(嘔吐または下剤の乱用など)があること。

とても死亡率が高い精神疾患です

神経性やせ症は、痩せることに強くこだわり、実際に体重が減少する精神疾患です。

痩せていることが自分の存在価値となっていて、痩せ過ぎていることをいくら説明しても理解できません。

体は、過度の痩せ状態に対して、エネルギー消費を最小限に抑えようとしますので、徐脈(心臓の拍動数が減少すること)、低血圧、低体温、うぶ毛の密生などが発生します。

脳の萎縮が見られることもあります。

痩せが極度に達すると内臓が障害されて、当然ながら死の危険もあります。神経性やせ症の死亡率は最大で10%程度と、精神疾患の中では高率です

ミネソタ飢餓実験|飢えるとどうなる?

健康な人でも飢餓状態に陥ると神経性やせ症と同様の異常行動が見られることが確認されています。

第二次世界大戦中にアメリカのミネソタ大学において飢餓実験が行われました。心身ともにとても健康と判定された男性36名が実験に参加しました。

①まず3か月間、通常の食事を摂る観察期間が設けられます。

②次に食事の摂取カロリーを約半分にする生活が6か月間行われました。

③そして、3か月かけて通常の食事に戻していくリハビリ期間を経て、

④最後に食事量の制限を解除して3か月の観察が行われました。

36名中32名が最後まで実験に参加できました。

飢餓実験のその後|神経性やせ症(拒食症)とそっくりに

半飢餓状態に置かれた被験者たちは、体重が平均して25%減りました(60㎏の人なら45㎏に)。

基礎代謝の低下に伴う徐脈や低体温などの身体的な変化のほか、精神的にも大きな影響を受けました。

まず、食事に対する関心が異常に高まり、他のことに集中することが困難になりました。食事への興味は実験後も続きました。

食習慣については、食べ物と遊んだり、塩や香辛料、コーヒーやガムなどの嗜好品の使用量が極端に増えたりしました。さらには、ベッドでの隠れ食いや、盗食、残飯の生ごみをあさる者も現れました。

食事制限が解かれると、多くの人が過食に陥りました。大量に食べても彼らは空腹を訴えます。過食嘔吐を繰り返す人もいました。8か月経っても一部の人は過食状態のままだったそうです。

精神状態についても顕著な変化が見られました。重度の焦燥、不安、抑うつ、集中困難、引きこもり、異性への興味の喪失などが見られました。

イライラして怒りを爆発させることや、逆に無気力、無感動になることもありました。さらには自傷行為(自分の指を自分で切断した人もいます)、自殺しようとする人、精神科に入院する人なども現れました。

元々健康だった人でも、半飢餓状態に置かれると、神経性やせ症とそっくりの状態に陥ったのです。


※出典:『臨床精神医学 第35巻 増刊号 2006』アークメディア


リバウンドは正常な身体反応

さて、神経性やせ症の特徴と飢餓実験の結果について見てきたわけですが、私たちがダイエットを行う上で知っておかなければならないことは何でしょうか。

それは、健康な人でも、半飢餓状態を伴うような過度のダイエットを行えば、誰でも過食嘔吐を繰り返す「神経性やせ症」に陥ってしまう可能性が高いということです。

過度なダイエットで神経性やせ症に陥ることを防ぐ最後の砦は、実はリバウンドです。

先にも述べましたが、ダイエット途中にドカ食いすると、元の体重をやや超えた時点で強い食欲は自然に治まります。

そして、体重が増えるに従い、理想的な体型や食事へのこだわりはむしろ軽減してゆきます。リバウンドとは正常な身体反応なのです。

強い食欲に恐れおののき、自己誘発性嘔吐や下剤を用いて食べたものを出してしまうと、神経性やせ症に陥ってしまう可能性が高くなります。

リバウンドして体重が元に戻ったからこそ、精神疾患に陥らずに済んでいるということを覚えておいてください。

ドカ食い(ダイエット中の過食)があるから健康でいられる

リバウンドは失敗ではありません。メディアの宣伝に惑わされないでください。

リバウンドしないほうが怖いのです。

リバウンドしたということは、無理なダイエットによって一時的にでも身体が半飢餓状態に置かれていたことの証しでもあります。

リバウンドこそが、精神疾患に陥ることを防いでくれているのです。

適切なダイエットとは?

日本肥満学会によると、適切なダイエット量は1週間で体重の0.5~1%以下と定めています。

体重が70㎏の人なら1週間で350~700g以下、1ヶ月で1.4~2.8㎏以下に抑える必要があります。

ということは、体重が70kgの人であれば、1か月で2kgくらいの減量であれば無理がありません。

体脂肪1㎏は7,200kcalに相当しますから、1ヶ月に2kg減量するためには現状より14,400kcalのエネルギーを減らす必要があります。1日に換算すると約480kcalを減らすことになります。

通常は、このうち280kcal程度は食べ物で減らし(ご飯ならお茶碗で一杯強)、残りの200kcal程度は運動で消費(ウォーキングなら約90分)することが望ましいとされています。

ということは、健康的なダイエットというのは(とっても月並みですが)、

腹八分目にして毎日歩く

ということで十分なのです。

まとめ

体重を減らす目的は様々だとは思いますが、過度なダイエットは禁物です。

肥満気味で痩せる必要がある人は、「腹八分目にして毎日歩く」ことを続けてください。ライフスタイルを変えることなく、楽に簡単に痩せられる方法はありません。

自分の存在意義を見つけるために痩せようとしている人は特に注意が必要です。無理なダイエットによる半飢餓状態は神経性やせ症(拒食症)への入り口です。

痩せていることが素晴らしい、痩せていることが美しい、痩せることが自信につながる、という社会風潮やメディアの広告戦略に惑わされないでほしいと願っています。



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松村メンタルサポート事務所

代表:松村英哉(まつむらえいや)

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 ストレスチェック実施者資格(SCKOTO15111012号)
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 中学校教諭1種免許状・社会(平13中1第20105号)
 高等学校教諭1種免許状・公民(平13高1第21175号)
 高等学校教諭1種免許状・地歴(平14高1第22856号)