Column お役立ちコラム

ストレスの原因と症状|効果的にストレスを発散・解消する方法について

ビジネスであれプライベートであれ、私たちはストレスから逃れることはできません。

この記事では、どうすればストレスを上手に発散・解消できるのかについて、メンタルヘルスの視点も取り入れて分かりやすくお伝えします。

そして、より理解を深めるために、ストレスによる体調不良のメカニズムについてもていねいに解説していきます。

ストレスとは|言葉を定義して理解を深めよう

私たちはストレスという言葉を日常的に使っています。

例えば、「部長がストレスで」とか、「最近ストレスで気が重い」、あるいは「最近眠れないけどこれってストレスかなあ」などです。

全てストレスという言葉で表現していますが、微妙に意味が異なっています。

ストレスについて正確に理解していただくために、ここでちょっとストレスに関する言葉の定義づけを行ってみたいと思います。

ストレッサー

ストレスの元または原因のことを、正確には「ストレッサー」と言います。

先ほどの例でいえば、「部長がストレスで」の言い方に該当します。

正しくは、「部長がストレッサーで」と表現されることになります。

ストレス

ストレスとは、体内で起こる何らかの変化やひずみのことです。

ストレッサーに対処するために自律神経が自動的に作動して、体に何らかの変化が起こります。

ちなみに、この変化(ストレス)は目で見ることはできません

上手な表現方法が見つからないのですが、ストレッサーによって、「うぐ!」とか、「うげ!」っとなるという感じでしょうか。

上の例では、「最近ストレスで気が重い」の「ストレス」の使い方に該当します。

ストレス反応

ストレッサーから受けたストレスによって生じた心身の不調のことをストレス反応と言います。

上の例では、「最近眠れないけどこれってストレスかなあ」ですね。

正確に表現すると、「最近眠れないけどこれってストレス反応かなあ」となります。

自律神経について

自律神経は、自分の意志とは関係なく、自動的に体を調節している神経です。

気温に応じて汗をかいたり、鳥肌を立てたり、食べたものを消化したり、心臓を動かしたり、呼吸したりしています。

ストレッサーに遭遇したときにも、危機対応として様々な働きを自動的に行います。

自律神経には、アクセル(活動)の役割を持つ「交感神経」と、ブレーキ(休息)の役割を担う「副交感神経」の2つがあります。

交感神経(アクセル)

日中に活動したり、獲物の狩りをしたり、または他の部族と戦闘したり、イノシシと戦ったり、ライオンから逃げたりするときに優位に働く神経です。

副腎からアドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが放出され、心拍数を上げて呼吸を浅く早くし、筋肉を緊張させ、血圧を上昇させ、消化を後回しにします。

さらに、炎症反応や免疫活動を抑制します。「危険だ、寝るな!」という指令も出します。

副交感神経(ブレーキ)

交感神経とは逆の働きをします。

休息と睡眠のために、心拍数を下げて、呼吸を深くゆっくりにし、筋肉をゆるめ、血圧を下げ、消化を促進します。

メラトニンという睡眠ホルモンを分泌させ、眠りに誘導します

ストレッサーについて

ストレッサーには、「物理的ストレッサー」、「化学的ストレッサー」、「心理社会的ストレッサー」の3種類があります。

物理的ストレッサー

暑い/寒い/広い/狭い/高い/うるさい/眩しい etc.

これらが原因で身体面に不調が現れることがありますが、メンタルヘルスへの影響は少ないといえます。

化学的ストレッサー

化学物質/食品添加物/薬物/アルコール/ニコチン etc.

こちらもメンタルヘルスに直接影響することは稀です。

※ちなみに薬物やアルコールはメンタルヘルスに多大な悪影響を及ぼしますが、これはストレスからの回避行動として進行する2次的なものです。

心理社会的ストレッサー

失業/降格/過大なノルマ/ハラスメント被害/離婚/家庭内暴力/犯罪被害/借金/喪失体験 etc.

メンタルヘルスに最も影響を与えるのは、この心理社会的ストレッサーです。

ここには常に他者との関係が潜んでいます。他者の影がまったく存在しない心理社会的ストレッサーはありません。

ストレスについて

交感神経が優位になる

心理社会的ストレッサー(例えば上司からのパワハラ言動など)にさらされると、アクセルである交感神経は、「危険が生じた、対処せよ!」と体中に指令を出します。

ストレスの正体は「危機対応モード」

その結果、アクセルである交感神経がとても優位になり、アドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが放出されて、心身ともに「危機対応モード」に入ります。

ストレスとは、体が「危機対応モード」に切り替わることということができます。

ストレスホルモンの放出は、短時間であれば心身への悪影響はありませんが、長期間続くと様々な悪影響が出てきます。

ストレス反応について

交感神経優位な状態が過剰に長く続くとストレス反応として不調が出てきます。

ストレス反応は、「身体面」、「心理面」、「行動面」の3つの領域に現れます。それぞれ詳しく見てみましょう。

身体面のストレス反応

不眠/頭痛/腹痛/下痢/肩こり/首の痛み/腰痛/せき/めまい/発汗 etc.

※不眠とは、危険は去ったのに、「危険だ、寝るな!」と交感神経が指令を出している誤作動状態のことです。

心理面のストレス反応

気分の落ち込み/ゆううつ/不安/意欲低下/楽しめない/虚無感/自責感/イライラ/怒り etc.

行動面のストレス反応

他人を避ける/お酒やたばこが増える/暴飲暴食/身の回りに無頓着になる/不潔になる/喧嘩する/物を壊す/遅刻する/欠勤する etc.

気づけないストレス反応(不調)がある

これらのうち、心理面と行動面のストレス反応には注意が必要です。不調に気づけなくなることがあるのです。

例えば、「そんなことはない」、「どうってことはない」、「たまたまだ」などと、自分に噓をついてしまうことが少なくありません。

しかし身体面の不調に嘘をつくことはできません。実際に痛いし、不快だし、苦しいからです。

したがって、ストレス反応をチェックするときには、必ず身体面の反応を優先的にモニタリングするようにしましょう。

敵はどこにいる?「現代のストレス状況」を定義づけしてみる

私たちにとって問題となるストレッサーは心理社会的ストレッサーです。すなわち、「自分に影響を与える他者の存在」ということになります。

しかしよく考えてみてください。ストレッサーである他者との実際の接触時間はとても短いはずです。

例えば、苦手な上司から嫌味を言われる時間は、超ブラック企業でもない限り、一日のうちで正味10分もないのではないでしょうか。

帰宅すれば当然その上司は物理的に目の前から消え去ります。

それでも気分は悪いし、イライラするし、よく眠れません。ストレッサーは消えたのに、ストレス反応は消えないのです。

ストレッサーは一体どこにいるのでしょうか。それはあなたの意識の中、頭の中にいるのです。

以上の事実を踏まえたうえで、「現代のストレス状況」なるものを定義づけしてみましょう。

それは、

頭の中だけの実在しないストレッサーによって、ストレス反応が長く続いている状態

ということになるでしょう。

ストレスを発散・解消するってどういうこと?

長く続くストレス反応(不調)の原因は、「頭の中だけの実在しないストレッサー」でしたね。

ということは、頭の中からストレッサーを追い出してしまえばよいことになります。

今この瞬間に起こっていることだけに注意を向けることができれば、頭の中のストレッサーを忘れることができるはずです。

世の中にはたくさんのストレス発散法が存在しますが、今この瞬間だけに注意を向けることができる取り組みであれば、すべてストレス発散法になりえます。

頭の中のストレッサーを忘れて、「今」に没頭できればよいということです。楽しく、心地よく、無理なく没頭できるものであれば何でも構いません。

簡単で効果的なストレス発散法・解消法の例

★好きな運動やスポーツに没頭する
★趣味に没頭する
★友人や家族と笑って楽しい時間を過ごす
瞑想する(マインドフルネス) etc.

少し例を挙げましたが、重要なのは何をするのかではなく、どのような状態で行うのかです。頭の中だけの実在しないストレッサーを、しっかり忘れる時間を持つことが最も重要なのです。

すべてに言えることですが、ストレッサーを思い出しながら発散法に取り組んでも意味がありません

例えば、上司の小言を思い出しながらジョギングや趣味をしても、まったくストレス発散・解消になりませんのでご注意を!

まとめ

皆さんを苦しめるストレッサーの正体は、実は頭の中だけにあるバーチャルなものです。敵はどこにもいないのです。

どのような発散法を試すにしても、頭を空っぽにして、今この瞬間を楽しむようにしてください。

「あっ今、嫌なことをすっかり忘れてた!」という時間をいかに長くするかということです。

この点にさえ気をつければ、目新しいことにチャレンジする必要はありません。今持っている楽しみ、趣味、友人や家族との時間を大切にする、それだけで十分です。

投稿者プロフィール

松村 英哉
松村 英哉精神保健福祉士/産業カウンセラー/ストレスチェック実施者資格/社会福祉施設施設長資格/教育職員免許
個人のお客様には、認知行動療法に基づくカウンセリングを対面およびオンラインで提供しています。全国からご利用可能です。

法人向けには、メンタルヘルス研修やストレスチェック、相談窓口の運営を含む包括的なサポートを行い、オンライン研修も対応。アンガーマネジメントやハラスメント研修も実施し、企業の健康的な職場環境づくりを支援します。