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職場のハラスメント|パワハラ被害をなくす効果的な研修について

パワハラがなくなりません。

厚生労働省が2022年6月に公表した令和3年度(2021年度)の「精神障害の労災補償状況」によると、「パワハラ」による労災決定件数が125件と全体の19.9%を占め、トップでした。

2020年6月にパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が施行されて、各企業でさまざまな対策や研修が行われていると思いますが、それにもかかわらずです。

なぜパワハラがなくならないのでしょうか。それは、パワハラを行う人の精神病理が、全くといっていいほど理解されていないからです。

この記事では、深刻なパワハラを行う人の精神構造を明らかにし、現状取り得る最も効果的なパワハラ対策と、求められるパワハラ研修についてお伝えしたいと思います。

激ヤバなパワハラ上司ってどんな人?

この記事で説明するパワハラ上司とは、「うっかり怒鳴ってしまった」とか、「被害者、加害者どちらの言い分にも一理あるな」というような、偶発的なパワハラ上司のことではありません。

執拗ないじめやいびり、詰問、人格攻撃、絶え間ないダブルバインド、つるし上げなどを行い、部下の心を壊し、時には退職にまで追い込む上司のことです。

このようなむごたらしいパワハラを行う上司のことを、この記事の中では「深刻なパワハラ上司」と呼ぶことにします。

私の身近にいた深刻なパワハラ上司の精神構造を分析すると、共感性・良心・罪悪感の欠如、不安や恐怖を感じない、自分だけは絶対に正しいという信念、他者は自分のために存在しているという傲慢さ、などが共通しています。

これらの特徴は、自己愛性パーソナリティ障害、犯罪を行うまでには至っていない反社会性パーソナリティ障害、欧米で盛んに研究されているサイコパスの特徴と一致します。

反社会性パーソナリティ障害とサイコパスには共通点も多く、脳の前頭前皮質の機能不全や偏桃体の萎縮、恐怖に反応しないなどの特徴があるといわれています。

自己愛性パーソナリティ障害は、自己愛を満たすためには手段を選ばないのが特徴です。原因に関する研究はほとんど行われていないようですが、遺伝の影響が大きいのではないかと考えられています。

いずれにせよ、深刻なパワハラ上司とは、「病院に行くほどではないが、ある種の精神障害を持ち、自然に治癒することがない人」と理解しておいてください。

※出典:『クラッシャー上司』 松崎一葉著 PHP新書


深刻なパワハラ上司の精神構造と治療

深刻なパワハラ上司は、共感性・良心・罪悪感が欠落していますので反省することがありません。説教しても説得しても、時間とエネルギーの無駄です。部下を持っている限り、むごたらしいパワハラは続きます。

罰を与えても学習しませんので改善は全く望めません。懲戒処分として左遷したところで、異動先の部下に対して再びひどいパワハラが始まるだけです。

深刻なパワハラ上司が「懺悔して改心」したところを、私は一度も見たことがありません。

では治療法はないのかというと、欧米で、罪を犯したサイコパスに対する治療において、薬物療法と認知行動療法の併用で再犯率が低下したという報告があります。

しかしこの治療は、犯罪者に対して刑務所内や矯正施設内で行われた強制的な治療であって、期間も数年に及びます。

また、方法を誤ると、治療の過程でサイコパスは、他人の上手な欺き方だけを学習し、再犯率が増加したという報告もあります。

そう、下手に関わるとパワハラが巧妙化して、さらに激化する危険性があるのです。

自発的に治療を行うには、苦しみ、困りごと、不安がなければなりません。しかし、深刻なパワハラ上司は苦しみも困りごとも不安も全く感じていませんので、自発的な治療につながる可能性はゼロに近いと考えてよいでしょう。

※出典:『サイコパスの真実』 原田隆之著 ちくま新書


社内での対処法はあるの?

深刻なパワハラをなくすことは不可能です。こんなことを言うとショックでしょうか。しかしこれが現実です。

パワハラ脳を持った人間は一定数、私たちの社会に必ず生まれてくるからです(サイコパスであれば人口の1~3%といわれています)。

とすると、深刻なパワハラを防ぐためには、パワハラ脳を持った人間を入社させないことですが、採用の段階で見抜くことは困難です。必ず一定数、深刻なパワハラ人間が入社してきます。

ではどうするか。

深刻なパワハラ上司を、善良な社員から遠ざけるしかありません。一番は退職してもらうことです。どんなに仕事が優秀であってもです。これは法的に困難でしょうか?

そうであるならば、深刻なパワハラ上司には決して部下を持たせないことです。

仕事は優秀なので退職されたら困るというのであれば、共感性・良心・罪悪感が欠如し、不安や恐怖を感じないという、持ち前のブルドーザーのような突進力を、単独の仕事で生かしてもらえばよいと思います。

深刻なパワハラ上司に研修は効果なし

従来のパワハラ研修は、パワハラ防止法の内容、パワハラの定義、パワハラの行為類型、安全配慮義務、実際の判例などを、管理職の方に向けて行っています。

そして、「だからパワハラはよくありません。パワハラをしないように気をつけてください」という結論に落ち着きます。私の研修もそうでした。

しかしパワハラは減りません。減るどころか、出来事別の労災決定件数でパワハラが1位になっているのです。

従来の研修というのは、深刻なパワハラ上司に対しては「馬の耳に念仏」だったのでしょう。

研修内容を理解して、「なるほど、パワハラには気をつけないと」と理解してくれる人は、初めから深刻なパワハラを行いません。

深刻なパワハラ上司は研修を受けても、「私には関係ない」と思っています。場合によっては、「ふ~ん、そんな奴がいるのか」と、人ごとのように理解している可能性すらあります。

そもそもパワハラ研修に参加しないこともあります。

深刻なパワハラ上司は研修ごときで改善することはありません。研修の翌日からまた激しいパワハラが繰り返されるだけです。

従来型の研修を行うことで、「うっかり系」や「どちらにも一理ある系」のパワハラは減らすことができるでしょう。無意味だとは思いません。しかし、深刻なパワハラ上司には完全に無力です。

真に必要なパワーハラスメント研修について

では誰に向けて研修を行えばよいのでしょうか。

それは、善良な全ての社員に向けてです。大切な同僚や先輩後輩を守るために、深刻なパワハラの本質を善良な社員に理解してもらいたいのです。

現状、善良な社員の方々は、自分が次のパワハラのターゲットにならないように、じっと息を潜めています。

しかし唯一の解決策は、善良な社員たちが深刻なパワハラを見逃さないことです。善良な社員たちが被害者を守り助けるしかないのです。

その方法を教える研修が必要です。それが最も重要で最も効果のあるパワハラ防止の研修だと私は考えています。

深刻なパワハラを防ぐための研修とは、パワハラを行う人に向けてではなく、パワハラを受ける可能性のある社員全員に向けて行われるべきです。

常軌を逸したパワハラであればあるほど、改善は難しくなります。

この「不都合な真実」であるパワハラの本質を、善良な社員全員に知っていただき、仲間を助ける動機づけを行うこと、それが、あるべきパワハラ防止研修だと考えています。

まとめ

部下を精神疾患に陥れるようなパワハラ上司は、パーソナリティに何らかの障害を持っています。

この障害は自然に治癒することも、自発的に改善することもありません。罰も説教も教育も効果がありません。

したがって、パワハラ対策のターゲットは善良な普通の社員です。深刻なパワハラを見聞きしたら、協力してしかるべき窓口に通報していただきたいと思います。

私の強い願いは、
①深刻なパワハラ上司には絶対に部下を持たせないでほしい
②善良な社員全員で深刻なパワハラの被害者を守ってほしい

この2つです。



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松村メンタルサポート事務所
代表:松村英哉(まつむらえいや)

首都圏を中心に、法人のお客さま向けにはメンタルヘルス研修、ストレスチェック実施者業務、従業員の相談窓口などの職場のメンタルヘルスを総合的に支援するサービスを提供しています。

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オンラインでも対応可能ですので、首都圏に限らず全国どこへでもサービスを提供いたします。

ストレスチェックに関する研修に加え、アンガーマネジメント研修、ハラスメント研修なども行っています。対面方式はもちろん、オンラインでの研修も承ります。‣詳しくはコチラ

保有資格  精神保健福祉士(登録証番号:第20949号)
      産業カウンセラー(合格証番号:S0605857)
      ストレスチェック実施者資格(受講番号:SCKOTO15111012号)
      社会福祉施設・施設長資格(修了番号:14A2-0486)
      中学校教諭1種免許状・社会(免許状番号:平13中1第20105号)
      高等学校教諭1種免許状・公民(免許状番号:平13高1第21175号)
      高等学校教諭1種免許状・地理歴史(免許状番号:平14高1第22856号)